私がいないキャンバス —— 「記憶の中の初めて」
「記憶の中の初めて」—— ほのか視点
真里からの着信が止んで、静かになった夜。私はふと、あの日のことを思い出していた。
私と真里は、物心ついた頃からの幼なじみだった。家同士が近所で、私の母と真里の母もよく立ち話をしていた。真里の父親は有名な日本画家で、時々家にお邪魔して真里と一緒に父親が絵を描いている姿を見たりしていた。
小さい頃の真里は、活発で男の子みたいだった。髪はベリーショートで、いつも泥だらけになって遊んでいた。木登りもかけっこも、何でも私より上手だった。「ほのか、ついてこい!」って、いつも先頭に立って走り回っていた。
そんな真里が何も話せなくなる事件があった。真里の父親が交通事故で亡くなった後のことだ。
小学五年生の秋、真里の父親の葬式の日。
私は母に連れられて、しんと静まり返った斎場にいた…

