私がいないキャンバス —— 「予備校の講評会」
「予備校の講評会」—— 真里視点
呆然としたままキャンバスの前に座っていると、授業が終わったようだ。私は首を振り、脳裏に浮かぶ整理できない色々なイメージを振り払った。なんだったんだあれは。気がついて辺りを見渡すと、他の生徒たちはみんな帰り準備をして帰宅しようとしている。
私も慌てて荷物をかき集めて立ちあがろうとした。
「篠塚さん、少しお時間をいただけますか」
別室の入り口の前で、縁なしメガネをした初老の講師が手招きをしている。私は首を傾げて、荷物を部屋の片隅へ置いて別室へ向う。
部屋の中に入るとテレピン油の匂いがした。質素な事務机の前にさっき手招きしていた講師が座っている。
「座って」
背もたれのない丸椅子を引くと、私はそれに腰掛ける。先生はメガネを押し上げて私の顔を見た。
「村山といいます。田中先生からあ…