雑文書きが日々思うこと。

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私がいないキャンバス —— 「予備校の講評会」

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ゆきにー@雑文書き
Sep 06, 2025
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「予備校の講評会」—— 真里視点

 呆然としたままキャンバスの前に座っていると、授業が終わったようだ。私は首を振り、脳裏に浮かぶ整理できない色々なイメージを振り払った。なんだったんだあれは。気がついて辺りを見渡すと、他の生徒たちはみんな帰り準備をして帰宅しようとしている。

 私も慌てて荷物をかき集めて立ちあがろうとした。

「篠塚さん、少しお時間をいただけますか」

 別室の入り口の前で、縁なしメガネをした初老の講師が手招きをしている。私は首を傾げて、荷物を部屋の片隅へ置いて別室へ向う。

 部屋の中に入るとテレピン油の匂いがした。質素な事務机の前にさっき手招きしていた講師が座っている。

「座って」

 背もたれのない丸椅子を引くと、私はそれに腰掛ける。先生はメガネを押し上げて私の顔を見た。

「村山といいます。田中先生からあ…

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